2019-02-08 追記あり。
本家シンガポールのティラミスヒーローのロゴやイラストがオリジナルではない可能性が出てきました。
シンガポール発のティラミス専門店『The Tiramisu Hero(ティラミスヒーロー)』。
この「ティラミスヒーロー」の名称と、本家シンガポールのオリジナルロゴに酷似したロゴを、日本のティラミス専門店『HERO'S』の運営会社『株式会社gram』が商標登録していた問題が大炎上しています。
本家オリジナル
問題の日本のお店
パクリなのに先に商標登録してしまった結果起きている問題と、商標権や著作権について、Webデザイナーだけではなく企業として気になる点を書いていきます。
目次
商標登録における先願主義
日本の関係ない企業が本家オリジナルのロゴをパクり、商品名とともに日本で商標登録。
本家シンガポールのお店は日本で「ティラミスヒーロー」の名称とロゴが使えなくなってしまった。
2019年1月23日現在、ロゴは『株式会社gram』によってロゴ商標として商標登録され、「ティラミスヒーロー」は文字商標として商標登録されています。
本家シンガポールのティラミスヒーローは日本で商標登録を行っていませんでした。
商標登録されると、商標権者以外はその国内で勝手に使用できなくなります。類似している商標も勝手に使用することができません。
商標権は国ごとに制度化されていて早い者勝ちです。誰でも知っている有名なロゴや名称でない限り、先に出願すれば登録されてしまうことがあります。
このため、本家シンガポールのティラミスヒーローは、オリジナルブランドロゴと「ティラミスヒーロー」の名称が日本で使用できなくなってしまいました。
ティラミスヒーローとHERO’Sのロゴの画像比較
これは…似ているレベルではありません。
この仕事を請け負ったデザイナーがいるのでしょうか。信じたくありません。
本家シンガポールポールのThe Tiramisu HeroのロゴはWebサイトからの引用です。
The Tiramisu Hero Japan
日本のHERO’Sを運営する『株式会社gram』が出願して商標登録されているロゴは、特許情報プラットフォーム『J-PlatPat』から引用しています。
「商標を探す」を選択して「ティラミスヒーロー」を検索すると出てきます。
特許情報プラットフォーム|J-PlatPat
商標権と著作権どちらが優先されるのか
このロゴは著作権侵害になると考えられます。
商標権は特許庁に登録してはじめて権利が認められます。
商標権は登録が開始された日から5年または10年です。継続を希望すれば更新可能なので、更新を怠らなければ半永久的に商標権が認められることになります。
著作権は制作した時点で自然に発生する権利です。商標権よりも前に著作権が発生しています。
著作権には、著作者の人格に関する権利を保護するための「著作者人格権」もあります。
日本の商標法29条で、商標権で保護されている商標であっても、商標出願前に発生していた他人の著作権若しくは著作隣接権と抵触するときは、その商標を使用できない、としています。
商標法 第二十九条
商標権者、専用使用権者又は通常使用権者は、指定商品又は指定役務についての登録商標の使用がその使用の態様によりその商標登録出願の日前の出願に係る他人の特許権、実用新案権若しくは意匠権又はその商標登録出願の日前に生じた他人の著作権若しくは著作隣接権と抵触するときは、指定商品又は指定役務のうち抵触する部分についてその態様により登録商標の使用をすることができない。
(専用使用権)
著作権侵害で訴えをおこして認められれば『株式会社gram』が出願して登録された商標権は取り消される可能性があります。
「ティラミスヒーロー」の名称が日本で使えない
『株式会社gram』によって「ティラミスヒーロー」が文字商標として商標登録されているので、他の企業などが日本で「ティラミスヒーロー」の名称を使用すると商標権の侵害となってしまいます。
本家シンガポールポールのティラミスヒーロー日本支店の公式サイトです。
The Tiramisu Hero Japan
【アントニオヒーローからの重要なおしらせ】
2012年にシンガポールでつくった
私達のオリジナルの「ブランドロゴ」がコピーされ、
只今日本で使用できなくなってしまいました。
私達が大好きな日本でこのような事が起きた事を、
大変残念に思っています。
でも、アントニオは負けません!
現在、日本で私達のオリジナル商品は
【アントニオヒーロー】と【ティラミススター】だけです。
もちろんシンガポールのティラミスヒーロー並びカフェは
何も変わっていないので是非遊びにきてください。
『ティラミススター』という新しいドメインの日本向けのWebサイトが用意されています。
Thetiramisu Star
文字商標とは?
文字商標とは、文字のみからなる商標のことです。
書体を特定しない「標準文字」による出願も可能です。
文字商標の例
『iPhone』アップル インコーポレイテッド
『三越』株式会社三越伊勢丹
『ミッキーマウス』ディズニー エンタープライゼズ インク
日本で文字商標の登録が認められると、商標権者以外は日本国内でその名称を勝手に使用することができません。
「ティラミスヒーロー」は文字商標に登録されているので、本家シンガポールのティラミスヒーローは日本国内で「ティラミスヒーロー」の文字を使うことができなくなってしまいました。
商標登録したロゴの「使用権をお渡しする」とは?
2019年1月22日、日本のティラミス専門店『HERO'S』は騒動を謝罪し、ロゴに関しては「使用権をお渡しする」との意向を表明しました。
「THE TIRAMISU HERO」 のロゴ(登録番号第6073226号)に関しましては、シンガポールの日本側運営会社に対し、その使用権をお渡しする所存でございます。
皆さまにお騒がせ致しまして誠に申し訳ありませんでした。
登録番号第6073226号の商標を調べてみました。
2017/12/08に出願されて、2018/08/17に商標登録されています。
出願人は『株式会社gram』です。
「商標を探す」を選択して「ティラミスヒーロー」を検索すると「登録番号第6073226号」のロゴが出てきます。
特許情報プラットフォーム|J-PlatPat
え?「ティラミスヒーロー」の文字商標は?言及なし?(登録番号第6031954号)
しかもロゴの「使用権をお渡しする所存」とは?
ちょっと何言ってるかわかりません。
(サンドウィッチマンの富澤さん風に)
商標権は譲渡できます。有償でも無償でも問題ありません。
当事者同士の合意以外に、特許庁へ権利を移転する登録申請が必要になります。
商標権の使用許諾というものもあります。商標権は譲渡せず、使用料を支払って使っていいよ、というものです。
本家ロゴをトレースしてパクッたロゴの「使用権をお渡しする」とは…今のところ商標登録を取り消すのではなさそうです。
おわりに
Webデザイナーなら、こんなパクリは絶対にやってはいけません。
「他のお店のロゴをパクッてWebサイトを制作しろ」なんて業務命令が来たら、最悪は仕事を辞める覚悟で断固として断りましょう。1度でも仕事を受けてはいけません。
もちろん、Webデザイナーでなくてもパクリはやってはいけません。
まだ問題は解決していません。
本家シンガポールのティラミスヒーローに良い形で解決することを祈っています。
日本国内で「ティラミススター」を見かけたらぜひ購入したいです。
2019-02-08 追記
本家シンガポールのティラミスヒーローのロゴやイラストが、ニュージーランドのイラストレーター ジェマ・コレルさんのイラストをトレースしたと、ジェマ・コレルさん自身がツイートしています。
本家シンガポールのティラミスヒーローのロゴやイラストもオリジナルではない可能性があります。
この問題は『ねとらぼ』さんに詳しく掲載されています。
まね“された”側の「ティラミスヒーロー」にも商標問題浮上 海外のイラストレーターがキャラの類似を指摘
@TheTiramisuHero Quite a few people have contacted me about the similarity about your logo and artwork to my designs. I can see that some of your branding and merchandise has been traced from my original (copyrighted) artwork. Care to explain? Thanks!
— Gemma Correll (@gemmacorrell) February 6, 2019
これに対しティラミスヒーローはInstagramで、ジェマ・コレルさんの大ファンでイラストに強く影響を受けたことを認め、謝罪しています。
この問題はいったいどうなってしまうのでしょうか。
オリジナルの製作者に許可を得ず、勝手に使用したり模倣したりすることは著作権侵害となります。
どんなに好きなイラストでもパクリは絶対にダメです。