Webデザインをする時にやってはいけないことがあります。
Webサイトは世界中の人に公開されます。
著作権侵害や違法行為は絶対にあってはならないことです。
センスやスキルだけではWebデザインはできません。
Webデザイナーとして必要な知識を身につけて、知的財産権や著作権への理解を深めましょう。
Webデザインでやってはいけないことの中から、知的財産権や著作権に関することを紹介します。
知的財産権について | 経済産業省 特許庁 – Japan Patent Office
著作権法 – e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
目次
著作権侵害の民事請求と刑事罰
著作権を侵害された側は差止請求や損害賠償請求ができます。(民法709条)
不当利得返還請求(民法703条、704条)、名誉回復等の措置請求もできます。(著作権法115条、116条)
著作権、著作隣接権の侵害は刑事罰の対象です。10年以下の懲役、又は1000万円以下の罰金があります。著作者人格権、実演家人格権の侵害などは、5年以下の懲役、又は500万円以下の罰金となります。
法人などが著作権等を侵害した場合は、3億円以下の罰金となります。
ネットで拾った画像やイラストを使う(著作権侵害)
ネット上の画像やイラストには全て著作権があります。権利者の許諾なくWebデザインに使うと著作権の侵害となり違法行為です。
検索で出てきた画像や他人のインスタ・ブログなどの画像がどんなに素敵でも、許諾なくWebデザインに使ってはいけません。
- 権利者から利用許可をもらう。
- 自分で撮影した写真を使う。
- 素材集で画像を購入したり、フリー素材を使う。
クライアントから提供された画像がネットで拾ったもの
実はこれ、よくあります。
クライアント側が著作権について理解が無く、ネットで拾った画像を提供されることがあります。
有名キャラクターや芸能人の画像を提供されたこともあります。
やんわりと、あくまでもやんわりと、
「利用許諾は取られていますよね」
「御社が著作権法違反になる可能性があるので、代替の画像を用意します」
などとクライアントに確認して、そのまま使わないようにしましょう。
著作権が切れた古い絵画は権利を確認
古い絵画など、作者の著作権期間が経過して著作権が失効しているものがあります。
日本では、基本的に作者の死後50年で著作権が切れて、その後はパプリックドメインとして自由に利用することが可能です。
著作権が切れた絵画でも「写真の著作権」「二次的著作物の著作権」が発生していることがあります。
Webデザインに利用する前に権利関係は必ず確認しましょう。
他のWebデザインを丸パクり(著作権侵害)
デザインの丸パクリはWebデザイナーの仕事ではありません。著作権侵害となります。
日本では制作物を制作すると自動的に著作権が発生します。
- レイアウト
- 配色
- ソースコード
レイアウトは「アイディア、手法」と解釈されます。手法なのでレイアウトを真似しても著作権侵害にはなりません。
配色を真似しても日本の著作権法下では問題ありません。
ソースコードも著作権の対象外という解釈がされています。
アメリカには知的財産権の一種 トレードドレス(trade dress) があります。トレードドレスでは配色も保護の対象なので注意が必要です。
他のサイトや書籍の文章をコピペ(著作権侵害)
文章にも著作権があります。勝手にコピペして使うのは違法行為です。
- 参考にして自分の言葉で文章を書く。
- 引用して、引用元を明確に表記する。
有名な動物の写真を勝手に使う(パブリシティ権侵害)
動物は著作物ではないので著作権はありません。人と違って肖像権もありません。
その動物が「タレント猫」などで写真から経済的効果を生む場合、パブリシティ権が発生することがあります。
許可なく勝手にWebデザインに使用することはできません。
パブリシティ権とは
有名人の肖像や氏名で経済的効果が生み出される場合に、第三者に対して自己の肖像・氏名の使用を許諾・禁止することによって、その経済的利益・価値を独占的に支配する権利。
経済的効果を生む動物の画像を勝手にWebサイトで利用するのは飼い主の利益を侵害していると考えます。
ふてニャンの春馬くん、猫侍のあなごさん、ソフトバンクのお父さん犬など、有名な動物の写真は勝手に使用できません。
有名な動物でなくても飼い主さんに許可を
動物は飼い主の所有物です。
有名でなくても、動物の写真を使う場合は飼い主さんに許可を取りましょう。
個人的に、もしもうちの猫の写真が勝手に他人のWebデザインに利用されていたら抗議します。
許可なく人物の写真を使う(肖像権侵害)
人物の写真には「肖像権」があります。
本人の許可なくWebサイトに利用できません。
肖像権とは、
プライバシー権
容姿を無断で撮影されたり、撮影された写真を勝手に公表されたりしないよう主張できる権利
パブリシティ権
有名人の写真など、生み出される経済的利益・価値を支配する権利
自分で撮影した写真に人物が写ってしまうことがあります。肖像権の侵害にならないように利用しましょう。
- 本人に利用許可をもらう。
- 画像を加工して人物が特定されないようにする。
フリー素材の人物写真を使う場合
フリー素材サイトの人物写真を使う場合、そのサイトの利用規約を必ず確認しましょう。
下記は禁止されている場合が多いです。
- 本人が政治的・宗教的な信条を持つと誤解を与える利用
- 本人が体験して語っているような使い方(吹き出しで「1週間で10kg痩せました」など)
- Webサイトのイメージキャラクターにする
特定のブランド風・企業風のロゴやデザイン(商標権侵害)
ブランド風・企業風に見えるデザインはパクリです。パロディもダメです。
「あのブランド風のWebデザインにしてほしい」と依頼されることがあります。
そのまま制作すると著作権侵害、商標権の侵害となって違法です。ちょっとの変更でもダメです。
東京オリンピックのエンブレム問題を覚えていますか?似ているだけで「パクリ」と指摘されたら多大な利益を損失します。
日本のCIデザイン界のスペシャリスト中西元男さんの2015年9月1日のエントリです。
何度も読み返している、とても勉強させられる記事です。
中西元男公式ブログ | 中西元男 実験人生: 2020東京オリンピックと「日本デザイン界の大きな時代遅れ」
ロゴやブランド独特のモノグラムなど、「ブランド風」の要素は使ってはいけません。
色や雰囲気を参考にするなど、パクリと指摘されないWebデザインにしましょう。
Google Maps のキャプチャ画像を使う(著作権侵害)
地形には著作権はありませんが、地図画像に著作権があります。
Google Maps などのキャプチャ画像をWebサイトに使ったり、加工して利用すると著作権法違反となります。
使用許諾 – Google マップ、Google Earth、ストリートビューの使用
ウェブやアプリケーションでの使用
Google のコンテンツをウェブやアプリケーションで使用する場合は、最初に、このページの冒頭にある一般的なガイドラインをお読みいただき、特に権利帰属表示に関する規約にご留意ください。
- 地図を元にしてオリジナルイラスト地図を作る
- Google Maps の機能を使ってWebサイトに地図を埋め込む
商用利用禁止のフリー素材を使う(著作権侵害)
フリー素材サイトで公開されている画像には「商用利用可」「個人利用可」などと規約に書かれているものがあります。
「個人利用可」だけで「商用利用禁止」の場合はWebデザインに使うことはできません。個人のサイトでも全世界に公開されるWebサイトは「商用利用」となります。
個人利用とは、個人のパソコンの壁紙にしたり、人の目に触れずに個人で楽しむことです。
許可なくキャラクターを使う(著作権・商標権・意匠権侵害)
許可がなければ完全に著作権法違反です。
キャラクターが商標登録されている場合、商標権の侵害にもなります。
物品の工業デザイン(意匠)として、意匠権による保護を受けている場合もあります。
他者が権利を持つキャラクターを使ったWebデザインは絶対にやってはいけません。
有名キャラクター風もやめましょう。
権利者に訴えられて多額の損害賠償を支払うケースもあります。
商標権の効力 | 経済産業省 特許庁 – Japan Patent Office
意匠とは | 経済産業省 特許庁 – Japan Patent Office
熊本県のキャラクター「くまモン」の国内利用申請
全国で見かける「くまモン」の利用許諾申請についてわかりやすくまとめられています。
熊本県のPRにつながったり、熊本県産品のPR促進等につながると認められる場合、利用申請を行うことができます。
要審査です。
くまモンのように、キャラクターを使用するためには利用申請と許諾が必要です。
許可なく音楽や動画を使う(著作権侵害)
音楽にも著作権があります。
許可なくWebサイトや動画のBGMに使用してはいけません。Webサイトなどに利用する場合は権利者に許可を取りましょう。
芸人ひょっこりはんのBGMの著作権侵害
2018年、吉本興業の芸人ひょっこりはんのネタに使うフリー音源のBGMで著作権侵害のトラブルがありました。
音楽素材MusMusの管理人は「著作権表記をしていない。著作権表記をしない場合の利用料を支払っていない。“フリー音源”として二次配布を行った」としています。
要するに、フリー音源ではあるけれど利用規約を守らずに利用したことが問題になりました。
ひょっこりはんによる当サイト楽曲への著作権侵害について | MusMus ブログ 2018年05月31日
吉本興業側が約束を履行することで解決に至ったようです。
フリー音源、フリー素材であっても著作権は著作者にあり、素材を利用させてもらうものです。
利用規約を守って利用しましょう。
おわりに
Webデザインをするときにやってはいけないこと、違法行為や他者の権利を侵害しないことはとても重要です。
Webサイトを公開してから「知らなかった」では済まないので、著作権などに関しては慎重になりすぎるくらいで大丈夫です。